ページ

2013/09/19

Interview : u.lab Dr Joanne Jakovich

海外の面白そうな教育サービス・教育機関を紹介していくシリーズをやると言っていましたが、ようやく始めていきたいと思います。

8月に1件シアトルでインタビューをしているものの、少し確認などに時間がかかっているので、順序は逆になりますが、第一弾は9/7に行ったシドニー工科大学(以下、UTS)でアントレプレナーシップやクリエイティビティに関するワークショップ等に取り組んでいるu.labCo-FounderであるDr Joanne Jakovichへのインタビューです。
(※今のところは日本語のみを想定しています。)

Dr Joanne Jakovichの経歴はこちらを参照




Interview


Shinsuke
u.labではどのようにプログラムが始まったのですか?

Joanne
u.labでは現在も様々なプロトタイプを作ってテストしているところなのですが、一番初めのプロトタイプは1012人のUTSのボランティア学生が参加して、UTSではなくスタンフォード大学で行いました。

2011年の1月にスタンフォード大学に行き、約16週間かけて毎週1回のmtgを行うという形式でした。UTSのデザイン、エンジニアリング、IT、ビジネス、建築等の様々な専攻から学生が参加し、チームを組んで取り組みました。5人程度の学生がデザインシンキングのようなワークショップに参加し、それ以外のメンバーはUTSで行うためのプロトタイプ開発を34ヶ月かけて行いました。

その結果、2つのプロトタイプをローンチしました。1つ目がBike Tankhttp://biketank.org/)でもう1つはEntrepreneurship Labのクラスです。毎週火曜日の朝に8時~9時までの1時間でBike Tankという公開プレゼンテーションのセッションを設けていて、その後の9時~12時までの3時間を学生だけにEntrepreneurship Labの授業を行っています。

Bike Tankの重要なポイントは公開プレゼンテーションのセッションとして広く門戸を開いていることで、それによってノウハウや社会との接点を獲得することを促進してくれるのです。起業家と一般参加者とUTSの学生が接点を持てることはそれぞれにとって有意義で、特に学生にとっては学びが大きいのです。これは参加者をミックスさせた1つの成功モデルだと感じています。

u.labのエントランス

Shinsuke
何故そのようなプログラムを始めようと考えたのですか?
ご自身がそのようなワークショップ等を体験されたのですか?


Joanne
個人的にはそのような体験をしてきました。私のバックグラウンドは建築なので、デザインスタジオやワークショップではそのような取り組みは一般的で、教育プログラムとしてもごく普通に設けられています。

そして御存知の通り最近はデザインシンキングのような言葉が有名になってきましたよね?なので、私は建築の世界で一般的であったデザインシンキングのようなものを他の分野に広めるよいチャンスなのではないかと考えたのです。

UTSの建築学部での講義
(外部講師を呼んでのディスカッション)
Shinsuke
先日、UTSの建築学部の授業を見学させていただいた際に、アシスタントの方に「今日はAdvocacyとかActivismをテーマにしたクラスだったけど、建築とはどのように関係するんですか?」と質問したら、「建築学部は建築物のデザインだけじゃなくて、社会をどうデザインしていくかということを学ぶ学問なのでAdvocacyとかActivismは関係しますよ。」と言われたのが強烈に印象に残りました。

Joanne
そうですね。日本の建築学部ではより工学的な建築に重点をおいていますよね。一方でイギリスやアメリカやオーストラリアの大学での建築学部やデザイン関連の専攻では、社会的な問題を取り扱うのが一般的ですね。だからこそデザインシンキングという言葉が有名になったんじゃないかとも思います。

そして私が面白いと感じるのは、デザインシンキング等の言葉が、デザインと関係ない(関わりの薄い)人達の間で使われて普及してきたことです。デザインシンキングというのは、ビジネスの世界の方々がデザインのプロセス等を説明したりタイトルをつけたりしているキャッチフレーズの一種ですよね。

Shinsuke
現在はu.labではいくつのプログラムがあるのですか?

Joanne
全て同時に行っているわけではないですが、プログラム自体は6つ~7つ存在します。現在取り組んでいるのは、Entrepreneurship LabのプログラムとCloud Share Sydneyという2つのプログラムです。そしてOpen Activismイベントにも取り組もうとしていて、今日から1つのワークショップが始まります。

Shinsuke
Entrepreneurship LabUTSの公式授業ですか?

Joanne
公式といえば公式です。但し、工学系とフォトグラフィー系の科目となっているので、それらを先行する学生は単位が修得出来るのですが、それ以外の専攻の学生には有効な単位とはならない状況なので、そこは今後他の専攻の学生にとっても有効な単位が修得出来る科目としていきたいと考えています。UTS2014年から学部横断的なプログラムを設置することになっているので、それに合わせて対応していくつもりですが、現時点ではゲリラ的に実施している授業ということになりますね。1つのセメスターに4つの科目があり、一年間で8つの科目が存在することになります。

Shinsuke
現在はどのような専攻の学生がu.labに参加しているのですか?

Joanne:
ビジネス、エンジニアリング、IT、デザイン、建築という5つの専攻から学生が参加しています。これはイノベーションを起こしたり、新しいアイデアを考えたりする上ではとても重要なことなのです。

そして面白いことに、オーストラリアは多文化なのですが、u.labに参加する学生は90%以上がオーストラリア以外で生まれているのです。特にそれらの学生に焦点を絞って募集しているわけではないのですが、この授業を選択する学生側に2つの特徴があります。1つは野心的な考えを持つことが多い留学生で、もう1つはオープンマインドで起業家になりたい等と既に考えている学生です。2012年のクラスでは20人の学生が参加したのですが、出身国は17カ国もありました。本当に偶然なんです。

オーストラリアの一般的な学生は日本の学生に似ていて、どちらかというとEntrepreneurshipCreativityといったことに無関心で以下にお金を稼ぐかというような事に関心が強いのですが、オーストラリア以外で生まれた学生は既にグローバルな経験をした結果、社会をどう変えるかということの必要性を感じているようです。

u.labでのEntrepreneurshipの講義

Shinsuke
u.labのプログラムでEntrepreneurshipCreativityを身に付けるために重要な要素は何でしょうか?

Joanne
学生にとっての要素と運営主体にとっての要素がそれぞれあると思いますが、学生にとっては、ダイバーシティ、リアルなチャレンジ、そしてデザインシンキングのスキルの3つが重要だと思います。

u.labではそれぞれに対応するようにしています。ダイバーシティについては海外でのワークショップを実施して国際的な価値観の違いを実感してもらうようにしていて、過去には中国の大連で5日間のワークショップを行いましたし、今年もインドネシアのバンダ・アチェでのワークショップを行う予定です。また、リアルなチャレンジについては外部の民間企業と提携して、民間企業が抱える課題を対象に実際に課題解決に取り組んで、最終的に企業にプレゼンテーションを行うということを行っています。そして、デザインシンキングのスキルを身につけるためには授業を行っています。全てに共通して言えるのは、実際に経験してみるということが非常に重要な要素であるということだと思います。

Interviewを終えて


偶然とはいえ、社会問題の解決等に興味を持つのはグローバルな経験をした人が多いという話はとても興味深い結果でした。どちらかというとアントレプレナーシップ等に関する講座やワークショップを経験した人達が社会問題の解決に興味を持つというプロセスかと想像していたのですが、それとは逆であったということです。

そして、シドニーは街を歩いていても実感出来るほど移民の方が多い都市なのですが、その都市とほぼ同じような環境にあるUTSにおいてそのような状況であるということは、日本においても同じ可能性が高いのではないでしょうか。

そうすると、仮に日本でもこれから社会問題の解決に取り組む人を増やそうとするならば、グローバルな経験をしてもらうということを先にしなければならないということですね。

インタビュー文中では紹介を少し省いていますが、20139月末に実施予定のインドネシアのバンダ・アチェでのワークショップも非常に魅力的なので私は参加しようかと考えています。


また、u.labとしてもコラボレーション出来るパートナーを探しているということなので、一緒にワークショップやってみたいという方は是非u.labWebサイト等を見てみて欲しいと思います。

Interview後のDr Joanne Jakovich
Thank you very much, Dr Joanne Jakovich.

0 件のコメント:

コメントを投稿